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リーベン
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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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「それではお元気で」
そう言った時の眼は、愛情なのか、憐憫なのか。
皇帝が、デマーゼルの感情らしい感情を見たのは、それが最初で最後だった。彼は仕事以外に他人との付き合いを持たなかった。彼の事を後から調べてみたが、記録はもちろん、家族構成、出身、人間関係も洗えなかった。
また皇居を出た後、尾行を付けさせもしたが、まかれてしまった。彼の行方はようとして知れない。
結局、自分はあの男の事を、何も知りもしなかったのだな。と、疲れたように皇帝はイスに座り直した。しかしそれでいて、もうあれ以上に心を開ける人間はいないだろう。という事も解っていた。


それから10年ばかり後、ある知らせが銀河帝国中に駆け巡った。この辺境の地、惑星アナクレオンでさえ例外ではない。
時刻は、昼を過ぎたあたり。そこそこに広い食堂だが、重労働者がとっとと昼の仕事に出かけてしまったため、人はまばらだ。そこにプレートをつつきながら、赤い巻き毛の男が「おい、知ってるか、ヒューミン」と、隣にいる男に呼びかけた。
ヒューミンと呼ばれた男は、たいして箸も進んでいなかったが、緩慢にプレートから顔を上げる。そこに、赤毛の男は、まくしたてるように喋る。
「いや、まぁ号外も出てるくらいだから知らないとは思わねえが。皇帝がさ、ほらクレオン一世だよ。亡くなったんだと。どうやら暗殺らしい。んで、宰相も辞任。今トランターはごった返して大変らしいぜー」
ヒューミンの青い瞳が、かすかに揺れる。しかし、男はそれにも気づいた風は無く、「でもまぁ、今までの皇帝と比べると、よく持ったほうじゃないのかねー」
男は、自分なりのトランターでの政治予想を展開させるが、ヒューミンのほうは男の言葉など、もはや耳に入らなかった。
ただ、小さく、震える声でつぶやいた。

「お疲れさまでした。我が主」


2008/06/02

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昨日やっと買って来て、でもまだ7巻の上しか読んでないんですが、
あれはとんでもない萌えの宝庫やで。

ing43.jpg
ing44.jpg

デマーゼルにキラキラした笑顔を求めるハリさんに爆笑した。
陛下はこの記者会見をビデオ(あるのか?)に永久保存するがいいよ。(笑)

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砂礫の王を並べ替えしました。
あと、桜の季節を追加。某笑顔動画で、同タイトルの曲を聞いた時に、
書くしか無いと思ってやった。すいません。

以前読んだ方は、(といっても特定の人だけだが)
桜の季節は順番入れ替わってます。3と2が。
時系列順の方が読みやすいかと思って。(読み返したら自分も混乱した)

桜が過去話。砂礫が現在。として読めば、時系列がわかりやすいかな?
たぶんダニールの立ち位置は解りやすいと思う。

あ、桜はちょっとエロいです。あんまりエロいつもりはないけど。
原作でそういうシーンあるんだから仕方ない…。
でもベイ→ダニ前提です。

あの二人は書きにくくてしょうがないね!

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『桜の季節』08年2月17日


それはもはや幾星霜の歴史の彼方。
深淵なる宇宙にプカプカと浮かぶ惑星の一つ。
時の霊廟に閉じられた世界でのある二人の会話。

ハラハラと舞い踊る淡い花弁に目を細める男性が一人。顔に細く刻まれる皺とは似つかない、不信と好奇心がないまぜになった、少年の様な表情でこれを見ている。
「これはなんていうものだい?ダニール?」
その問いに答えるように、背後から音も無く寄る痩躯の青年。
「桜という木ですよ。パートナー・イライジャ」
風がふわりと枝をなで、その度に木の下には、白い空間が産まれる。
「もともと、地球のアジアにある、日本と言う国の木です。春になると満開に咲き誇り、人々は宴会を開いたと聞きます」
ダニールと呼ばれる青年は、凛とした声で流れるように語る。
「風も野外も、“自然”なんてものは大嫌いだが、この景色は嫌いじゃない」
イライジャ・ベイリは、桜の木をうっとりとながめる。
今でも、アジアのシティに行けば、この景色が見られるのだろうか。と考えるが、完全に閉鎖されたシティの中で、花びらをまき散らされたら清掃がたまったものではないなと、すぐにこれを打ち消した。あそこには、還るべき土がない。
「人々が宴会か。皮肉だな」
人間がひしめき合う地球では、木は生かされず、ここ惑星オーロラでは集団での交友が日常化していない。地球から持ち帰った伝統など忘却の彼方と言う訳だ。
「日本文化では、桜は命のはかなさを表しているそうです」
と、ダニールが説明を続ける。
「儚いか。確かに我々地球人は寿命が短いな」
「そうです。人は移ろいがあるから、美しいのです。私の身体は鉄板で出来ていますから、美学からは外れた駄作でしょう」
ベイリの皮肉にも、まっすぐに答えるダニールにぎょっとして振り向く。その顔はやはり、感情という感情は何も映していない。
人間は美しいとダニールは言う。しかし、
「ロボットこそ儚い生き物だろう」
「また、何をおっしゃっているんですか。ロボットは生き物ではないですよ」
ダニールは即座に否定する。
桃色の花弁はまた、ちらちらと舞う。

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突然与えられた任務は、地球人類の名誉をかけた殺人事件。それが成功してみると今度はどうだ?わざわざ他の惑星までおもむき、事件解決だと?惑星外交官か俺は。惑星オーロラに来てから、幾日も立つと、ベイリにまた気持ちの悪い不安が押し寄せて来た。
たった一人の人間のその肩に、惑星の存亡が預けられている。無言の重圧は、そうでなくとも孤独な地球人の神経を蝕む。
世界、いや銀河最高峰のヒューマノイド破壊事件。容疑者はベイリと懇意にしているハン・ファストルフ博士。
関係者に話を聞いて回り、現場にも向かった。被害者の遺体も検査した。しかし、事件への糸口はようとしてつかめない。
「パートナー・イライジャ。あなたなら大丈夫ですよ」
ファストルフ邸で、厚いクッションのイスに座りながらも、イライラと神経を尖らせるベイリに、ダニールは声をかける。ロボットゆえの気配りだろうか?そう考えると腹が立ち、差し出された紅茶にも目もくれず、ベイリは「うるさい」と一蹴する。
「今までは、ただ失敗しなかっただけだ」
ありきたりのおべっかなど要らない。これは、努力したよく頑張った。ではすまされないのだ。結果が出なければ、銀河系からの地球人類の評価。最高峰の科学者の頭脳。無くすものは、ちっぽけな一人の人間の命よりはるかに重い。焦りから、つい余計な言葉がこぼれる。
「お前は、人がそう言って欲しい事をそのまましゃべっているんだろう?R・ダニール?そうとも、R、R、R!お前はロボットなんだからな。どうせお前には人の心なんて分らない」
言ってしまってから、どす黒い本心に血の気が引いた。なんて馬鹿な八つ当たりだ。その身を案じ、彼の為なら危険に身を投じる事もいとわないとした、あの雨の夜は何だったんだ。
うつむいたまま視線をさまよわせるベイリに、掛けられたダニールの声は揺らがなかった。
「貴方がおっしゃるならそうかもしれませんね。パートナー・イライジャ。私はロボットです。ですが、ロボットとしてプログラムされている事でなくとも、私は貴方を信じている事に変わりありません」
貴方が望むままに私は存在するんですよ。そうかけられた声に、返す言葉が見つからない。スクラップになってもかまわないとまで言い出すダニールに、ようやくその顔を見据える。貼付けたような眉目秀麗な顔がこちらを見据える。
私は人間の為にある、ロボットなんですよ。
そういうダニールの目は確かにガラス玉の様だった。

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