| Admin | Write | Comment |
プロフィール
HN:
リーベン
性別:
非公開
自己紹介:
リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[12/19 リーベン]
[12/15 yuu]
[08/10 リーベン]
[08/10 秋野]
[08/10 折易]
最新記事
(11/20)
カウンター
ブログ内検索
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

4.
「…死ぬってどういうことだろうね」
「二万年も生きて来たのに分らないの?」
「二万年生きて来て、一度も死んだ事がないもので」
気がつくとファロムは、どこかしれない上品な部屋に佇んでいた。目の前には癖のある金髪の女性がイスに腰かけていた。
「お父さまが冗談を言うとは思ってなかったわ」
女性は明らかにファロムに向かって、話し掛けている。だが、お父さまとはどういったことだろう。
「冗談ではないよ」
ファロムの口が意図せず動いた。
そこでようやく、これはダニールの内側から見た記憶なのだ。という事に思い至った。よく見ればこの女性は、ドース・ウィナビリじゃないか。話しに聞いていたセルダンのお嫁さんで、ダニールの娘という事か。
しかし…。ファロムは、知らなかった時代のダニールが、親しくお父さまと呼ばれた事に少し嫉妬を覚えた。ダニールの娘である事に誇りを持っているし、なんとなく、娘は自分一人だと思われたい。
「それでは私に死んでみろというの?」
「そんな訳じゃないよ。死人は何も語らないから…いや、まてよ」
ドースは少し驚いた顔をした。今の自分は、ダニールはどんな顔をしていると言うんだろうか?
「そうか、君は“死ぬ”事が出来るんだね」
どこか満足感のあるような、暖かみのあるような声が出てくる。
「私は、“壊れる”事しか出来ない」
ブツブツと視界にノイズが走った。
「個人的な死と、一般的な死について教えてくれた人が居たけれど、私は個人的な死を自分のものとして感じる事は絶対に出来ない。君は私が作ったていうのに、本物みたいだね。きっと君が死んだら大勢の人が泣くんだろうな」
「私に言わせれば、お父さまだって十分人間っぽいわよ。それに…」
ブツブツと音声にノイズが混じる。
「“機能”じゃなくて“生きて”来たなら、その果ては“瓦解”ではなくて“死”ではないの?」
ブツブツとノイズが走る。
「どうだろう。私にはまだやらなきゃ行けない事が多過ぎて…。緩慢な生にも、等しく死はあると思うかい?」
ブツブツとノイズが走る。
「さあ、でも自分で最後を決められるのなら…」
ブツブツとノイズが走る。
ブツブツとノイズが走る。
ブツブツと…。

そこで意識は情報の渦に呑まれた。

***

ファロムは気が付けば草原のまんまんなかで、仰向けで寝ていた。これも、どこかの記憶だろうか。とも思ったが、よくよく自分の体を見回してみれば、それと分る手に本来の自分の姿だと認識した。この映像も自分の部屋の室内空間を切り替えられて作られたビジョンだ。きっと母が連れて来たのだろう。
ビジョンの機能を停止させると、いつもの部屋が現れた。上半身を持ち上げると、やけにだるい。なんだか、長い事横になっていたようだ。
早くママに、私は無事だって伝えなきゃ…。
それから、それから、言いたい事はいっぱいある。
あなたは確かに“生きて”いるんだって。
ああ、でもどうだろう。今日は月がやけに静かな気がする。頭がすっきりした性かもしれない。早くこの部屋から出なきゃ。きっと温かい食事を用意して、おつかれ。おめでとうって言ってくれる筈なのだ。
「ママ…」
どうして足が動かないんだろう。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[144] [143] [142] [141] [140] [139] [138] [137] [136] [135] [134]
忍者ブログ [PR]