季節が巡り、また桜の季節がやってくる。
降り積もる淡い色に埋もれて、ダニールは思い出す。
またこの木の下で会おう。伝統にのっとって、友人同士で宴会をしよう。そうベイリは約束した。
ジスカルド、マダム、博士、そしてイライジャ。
約束をした彼らはもういない。ベイリの約束は結局、一度もかなえられる事は無かった。
そうだ。あの日の事は、何百年前の記録だろう。
古いデータを食いつぶしつつ、あの人の記録だけは厳重に、忘れないように保存している。私には何をしてあげる事も出来ない。ただ、記憶を持って行くしか無いから。
すべては、イライジャの子孫を、人類を見守る為に。
どこまでも自分はロボットだ。
ダニールは低い自分の起動音を聞く。
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