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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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いろいろ勇気をもらったので、一気に書き上げてしまったファロム話し。
これを読めば、ファウンデーション(4、5、6、7)のあらすじが丸分かりというお得な構成になっています。逆に、分かっている人には説明が長い。(苦笑)
今まで二次で書いて、登場して来たキャラクターも随所にちりばめましたので、そう言った意味で以前のはなしも分かりやすくなったかと!
しかし、一万字って…。長かったわー。もう二度とやらん。

今後は、姉さんと兄さんが死んで末っ子ロロがクレオン一世になった話しと、サートンパパのとこのダニール3兄弟話し書きたいです。

感想くれると喜びます。ありがとうー。

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ふと、ファロムは自分が図書館に居る事に気がついた。データの再生が済んだのだ。堅いイスの上で、ファロムは二万年を生きた、孤独なロボットの事を思った。
大好きな人に死に別れて、それでもなお焦がれている。それを自覚しないままに。
と、涙が頬を伝った。
それと同時に、いいようのない温かいものが胸に沸き上がってくる。
ファロムは図書館の電源を落とすと、走って部屋を出た。

「ママ!」
泣きながらやって来たファロムに、ダニールはぎょっとした。この高度なロボットは、人が傷つく事に圧迫されるような痛みを感じる。
「どうしたんだい?」
彼女をなだめようと、腕を広げる。走って来た彼女は、タックルするようにダニールにすがりつく。そして逆にファロムは、ダニールを抱きしめて、
「ママ、大好きだからね」
と言って、ぼろぼろと泣き出した。そして何度も大丈夫だから。と、ファロムは言った。ダニールは、事態が飲み込めず彼女にしたいようにさせた。

***

トランターに行く。とファロムが言ったのは、その翌日の事であった。
ダニールにはその突然の心変わりが、理解出来なかったがしかし、止める理由も無かった。ファロムはにこにこと、ダニールにすりよった。腰の辺りをぎゅっと抱きしめると笑顔で、
「ねえ、ママは誰が一番好き?」
と聞いた。それを見てダニールは優しく
「ファロムだよ」
「嘘よ!」
ダニールの言葉を、ファロムはきっぱりと断言する。
「へへ…」
その無邪気な顔は、別に怒ってる訳ではない。この前からのファロムの不審な行動はなんなのであろう。突然甘え出したかと思えばこれだ。
「私にはなんでもお見通しなんだから!」
と嬉しそうに笑う彼女を見ていると、悪い気はしないのだった。
「そうだ。あのね、どうせ月を出るなら寄りたい所があるの」
とファロムは言った。
「オーロラに行きましょう。バスケットに沢山美味しいものを積んで」

長い旅の終わり。
2万年と一世紀のあとで、二人だけの花見が始まる。

おわり
2008/07/01

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青い。
まずそう思った。
眼前に広がった青色が、空のいろだと理解するのにしばらくかかった。
高い空にはもくもくと綿をちぎったような白い雲が緩慢に流れている。ファロムが今まで行って来た、どの惑星とも感じが違う。どこがどうとは言えないが。
青い芝に、からっとした日差しがふりそそぐ。ふと、ファロムの後ろで声が聞こえた。あわてて近くに生えている太い木の幹に隠れた。

「あ、ママだ」
ファロムの方に向かって、ダニールともうひとり人間が歩いてくる。強い日差しを避けるように木陰に入ると、男はほっと息を吐いた。ファロムはまじまじとその男を観察した。茶色の少しウェーブがかった髪。目尻と口元には皺。歳の頃は分からなかったが、きっとおじさんと呼ばれるくらいの年齢なんだろうな。とファロムはなんとなく思った。
こっちが、じろじろと見ていても、彼はまったくこちらに気づく様子は無い。しかしそれは当たり前なんだと、ファロムは思い出した。これはデータであり過去のダニールの記憶なんだから。
とうのダニールは、今より表情がぎこちなく、ロボットらしい風である。青白い顔に、色の薄い髪をなでつけている。つるっとした、能のような顔で男を見ている。と、男がここちよい低い声で喋り始めた。
「地球に帰りたくないな…」
「いえ、あなたを無事に地球まで送り届けるのが、私の任務です」
木の幹に体を預け、腰を下ろした男に向かって、直立不動のままダニールは答えた。
「なんだ。追い出そうって言うんだな」
男が、歳に似合わずすねたような声を出す。
「そんなことは、言っておりません」
広い草原には、他に動くものの影は見えない。ふいに訪れた沈黙に、遠慮がちに風が通り過ぎた。
「地球に帰ったら、お前には会えなくなる」
と男はすねたように言った。ダニールは、ぽかんとしたような顔になる。
「なんだ。寂しいとか言ってくれないのか」
男は、そんなダニールの顔を見た。男の位置ではダニールの顔は影になってよく見えない。そばに寄るように指示すると、ようやくダニールは腰を落ち着けた。
「寂しいというような、人間のような感情は持っていません」
「うん。お前はいつもそういって、ごまかすんだよなぁ」
「ロボットは人間をごまかしたりしません」
ダニールはロボット全般を代表するように答えた。
「それに、あなたには地球でやるべき仕事が残っているじゃないですか」
「地球人による、宇宙進出ね…さてうまくいくか。気の長い話しだ」
「ファストルフ博士が、今回の事件解決の功績に政府と掛け合ってくれるとおっしゃっていましたが。なにか不安なんでしょうか?」

木立に隠れているファロムには、なにがなんだかよくわからない。それでもなんとなく会話を聞いていると、ここはダニールの故郷の惑星オーロラであり、男は何かの事件解決の為に地球から呼ばれた刑事であり、その事件解決のパートナーはダニールだという事が分かった。
私には、すぐに地球に帰りたいとばかり思っていました。とダニールは男に言った。
「だからこそ、すばやく宇宙船の手配もいたしましたのに…」
鎖の付いた時計を取り出して、何とはなしに時間を確かめた。青い空色の石で美しく装飾された銀時計だ。と、男が時計に気がついた。
「あ、それ」
ダニールは男に時計をさしだした。男はそれを受け取ると、大切に使っているみたいだな。とつぶやいた。
「ええ。人から贈り物を貰ったのは、はじめてです」
「自分で買った訳じゃないんだがな。最初の事件の、功績を認められて貰ったものだから、お前のものでもある訳だ」
そうはいっても、わざとダニールの瞳と同じ、空色の石を使ったものを選んだということは、初めからダニールへの感謝の気持ちを込めた贈り物として考えていたという理由があるのだが。
「いえ、あなたから貰った事が重要なのです」
「はは。嬉しいな」
男は軽快に笑った。ダニールは首を傾げる。
「やっぱり、心はあるじゃないか」
と、男は言った。そして立ち上がると、「桜の木」と言った。
ダニールは、ああ。と相づちを打つ。
「桜の木の約束がありましたね」

「ずっと先でまた会えるか」

振り向いた男に、ダニールは初めて本当に優しい笑顔をみせた。
「これから地球人が宇宙進出して、スペーサーも地球産まれも境界はなくなって、ロボットとも共に生きられるようになって、そしたら迎えに行くよ。大切な友達をさ」
「…はい」
雲が動き、日に当たってダニールの手元で、青い石が光った。

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ファロムにはよく分からなかった。
そもそもなんで、ママは2万年も人間に肩入れするんだろう?
ダニールはファロムに、人間のよさをとくとくと語るが、その人生を聞いていると、どう考えても辛く苦しい事が多い。それなのにダニールが語る人生は、陰惨さを感じさせない。もしかして、ママは辛い事を辛いと感じないように設計されているんだろうか。などとファロムは考えてしまう。
そして、自分の事に対してはなにも執着しない母が、耳たぶをそっと触る時、すこし柔らかい顔になることに気がついた。そこには、ダニールの眼とまったく同じいろの小さい石が輝いていた。

***

月での一日は単調なものである。外部との交流が根絶しているため、それは仕方のない事だ。しかし、そんな穴蔵生活を、ファロムは故郷に居た時はずっとして来たのだし、なにより色々な事を覚えるのが楽しかったので、この生活に不満は無かった。
一方ダニールは、全宇宙に張り巡らされたネットワークのおかげで、こんな所に居ながらも、銀河帝国の動向を知る事が出来た。今もダニールは、ターミナス各地の銀河帝国で起こった出来事に関心を向けている。ファロムは、自室で静かにマシンを操るダニールをみて、ひとりで勉強部屋へと向かった。本当は、一緒に付いて来てもらいたかったのだが、なんだか悪いような気がした。

勉強部屋には、ダニールのバックアップデータがある。ばかでかいスーパーコンピュータと、閲覧用の機材が設置している。薄暗い部屋に入ると、自動で電気がついた。マシンは熱に弱い為、部屋には冷房がかけられている。すこし寒い。
肘掛けと背もたれの付いた大きなイスの上部に、特殊なヘルメットがアームに吊るしてある。機能面だけを重視したような、無骨なイスに少女はよじ上る。電源を付けると、マシンが低い音を立てて起動した。ぐっと、ヘルメットが、少女の頭上まで下りて来た。ファロムはそれを受け取ると、具合のいい位置に取り付けた。

ここは図書館のようなもので、サーバに検索をかけると画像と音声を使ったデータを呼び出し、閲覧することができる。メニューを開くと、ドングリ眼の金色の滑らかな長い髪をした女性のホログラムが出てきた。昨日の履歴を見ながら、今日はどこを読もうかと、ランダムにトピックスを検索する。ファロムは、歴史が好きだったので、そこを重点的に項目を呼び出させた。
文化や歴史は、科学や数学といった、単純にある事項を覚えるだけではなく、そこに生きていた人々のドラマがあっておもしろいから好きだった。
ずらずらと頭の中に流れる文字列を眺めていると違和感を感じた。何かが隠されている気がしたのだ。それこそ、感のようなものだったが、ファロムはその正体を見極めたくなった。

***

ああ、確かにそうか。
それは2万年まえの記事だ。そしてそれはダニールの記事でもあった。確かに、彼のバックアップデータならば、彼自身についても書かれていないとおかしい。だが、
「そのデータはマスターの権限により、閲覧出来ません」
ナビゲーションシステムは事務的にそう言った。シールドがかかっているのか。
「そんな事言われたって、私はママに自由にこれを見ていいって言われているのよ」
ファロムは、反論した。
「そのデータはマスターの権限により、閲覧出来ません」
「だーかーらー、そのマスターに許可貰ってんのー」
ファロムは、ぶーぶーと不満を漏らす。
義務として、この図書館にデータを入れつつも、見られたくない親の秘密とは一体なんだろう? 幸い、ダニールは他の用事にかかりつけになっている。なんだか、面白そうじゃ無いか。
少女はひと呼吸置くと、シールド解除にとりかかった。
「もう、あなどんないでね。ママ」

人の心が読めるファロムに、隠し事は通用しない。だから、ダニールは自分を育てたら死ぬつもりだということも知っていた。バージョンアップを重ねた陽電子頭脳だったが、これ以上容量を増やす事は出来ないらしい。そうは言っても、また新しい技術を開発すればいいとファロムは思っていた。だからこれは人で言う、老化と疲労ということだろうか?
2万年。どれだけ長い月日なのか。うら若い少女には、途方も付かない。
ファロムは必要以上に自分に能力がある事を隠していた。彼女が、成長を終えたとダニールに感づかれたくないからだ。そうしたら、今のこの生活も終わってしまう。
「んーセキュリティレベルの問題かなー?」
等と言いながら、ファロムは慣れた手つきでデータにちょっかいをかける。いいかげんに開けなさい。と念じると。
「パスワードを入力してください」
突然プログラムは言った。
パスワードなんてもちろん知らない。けれど、もしかしたら…ダニールがいつも、心の奥底で思い描いている言葉があった。ファロムにはよく分からない言葉だったけれど。ものは試しと、ファロムは言った。
「ふれんどいらいじゃ」
イメージプログラムが起動した。とたん立体映像が電脳空間に広がった。

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性別は、異星人が勝手に付けたものだ。
ファロムは、連れて来られた宇宙船の中で、多数決によって「彼女」と決定された。だから、本当はファロムは「彼女」でもないし、「彼」でもない。それは、ソラリア人が人との直接の接触をタブーにしてきたことに由来する。
人と会う事がタブーであっても、子孫繁栄をおこなわなければ種として生き残れない。だから、彼らの文化では、夫婦と言うのは汚らわしい関係だった。やがて彼らは、生殖を自分一人だけで行えば良い。という、あまりにも単純な結論を出した。そして、科学技術によって、もっとも自然な形で自分のコピーが出来るように肉体改造をしたのだ。子供を作る事も、作らせる事も出来る体。半陰陽。だから、ファロムは「彼女」であって「彼」でもある。
しかし無性別というならば、それはこのダニールというロボットにも当てはまる。といっても、ファロムの体のように、「どちらも付いている」のではなく、パーツの入れ替えが可能な中世的性質を持っているということだが。そして現に、「彼」は、「彼女」であった事がある。
さて、ファロムの世界では、半陰陽こそが完璧な人間であり、どちらかの属性しか持たないものは出来損ないだと教育されて来た。しかし、ファロムはここに来て、その認識が一般的でない事をダニールから学んだ。しかしダニールとて、現在のボディを基準からはずせば、元来男女どちらでもないのだ。その決定権は従うべき主人、人間にある。これに、ファロムは母親を選択した。ダニールに、月までの渡航に同乗していた女性のような役割を演じて欲しかったからである。
そしてもうひとつ理由があるとすれば———。

「そういえばママの娘って、どんな子だったの?」
ダニールは、ファロムにものを食べながら喋らないように。とやんわりと注意をすると、
「ドースの事かい」
と言った。
ドース・ウィナビリは、ダニールが制作したヒューマンフォームロボットである。ダニールが惑星トランターでデマーゼルという名を使い、宰相をしていた頃、彼の手助けをする為に生み出された。
ファロムは、ドースをダニールの娘と認識している。「産む」のと、「生む」の違いをよく認識していないからだ。それというのも、ロボットとなじみが深かった為に、人間と機械に明確な線引きが出来ていないからだ。また、新しい知識として「産む」のは女だとインプットされている。これが、ファロムがダニールを母と呼ぶ理由の一因になっている。
もちろんダニールは、産んだのではない。と否定はしていたのだが、言葉は覚えたら使いたがるもので、やがてダニールも修正するのを諦めたようだった。
「彼女は、そう、いい子だったよ」
長い歴史を持つ、トランターを政治的中心とした銀河帝国は、その平和に対する高慢な安心感から徐々に衰退して行った。モラルは失われ、新しい技術開発はなされなくなった。そして中央集権が終わりを迎え、地方が己の領土を広げる為に無法時代を迎える事になる。
しかし、それをあらかじめ予想していた人間が居た。ハリ・セルダンだ。
数学者であった彼は、新しい学問である心理歴史学を完成させて、無法時代をたった一世紀で終わらせ、人類の終焉を回避する方を生み出した。そのおかげで、トランターは打ち捨てられたが、辺境の地にあったターミナスが新しい政治の中心になっているし、技術革新や各貿易もなりたっている。
一世紀前、まだ若く心理歴史学を考案していたセルダンの護衛任務をまかされたのは、他ならぬドースだった。彼女は、様々なトラブルに巻き込まれつつも、彼をひたすら守った。そしてセルダンと恋に落ち、結婚し養子を迎えて、やがてハリを守ってその生涯を終えた。
「私は宮廷から追い出されていたし、またその頃は外惑星に居たから、破壊された彼女を修理する事は出来なかった」
しかし、彼女は仕合せだったと思う。何十年と愛するものと側で暮らせたのだ。ダニールは、もし自分が選ぶ事が出来たなら、大切な人を生涯守り、その人の為に果てたいと思った。
だが、ファロムはというと、
「やっぱり人間って疫病神ね」
とそう言った。トランターには絶対行かないわよ。と、念までおされて、ダニールは苦笑した。

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