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リーベン
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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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なぜか思い立ってmonsterその後パロ。
双子引き取られた設定で、ヨハンさん視点。







「そこに歌などなく」


教会ではなく、境界ではないかと思った。あまりにも静か過ぎたから。


新しい町で見つけた、重い石造りのカトリック教会は、薄暗く小さかった。
天井の粗雑なステンドグラスから、うすぼけた光がもれる。
縦二列に几帳面に並んだ、年代を感じさせる黒ずんだ木製の長椅子。見渡して、列の後ろから2番目に、適当に腰掛けた。
ひやりとした空気が、ここは厳粛な空間だと誇示している気がした。
信仰心が厚い人間だと周囲にアピールする時は、日曜日など熱心に通っていたものだが、ここしばらくは縁がなかった。
もともと、キリスト教会など里親に義務的に行かされていただけであったし、それがカトリックだろうとプロテスタントだろうと、たいした信仰心は持ち合わせていない。
神などいない。居るのは、怪物だけだ。

買い物でもしようと思って家を出て来たのだが、そもそも自分の事で何かが欲しいと思った事は無いし、日用雑貨で不足しているものは特になかった筈だ。
そんな訳で、彼は今ほぼ手ぶらに近い。空いた手で、祈りのポーズをするのには絶好だと思う。しかし、なにを祈れば良い?
最前列では、さっきから年老いた丸まった背中が見える。何を祈っているんだろうか。なんとなく、興味が湧いた。

自分の今の保護者は、彼がぶらぶらと出歩くのを良しとしない。
彼がなにかトラブルを起こすと考えているからではない。むしろ、そう思っているのは双子の妹の方で、あの保護者はどうやら、彼が外から泣いて帰るのではないかと思っている節がある。
なんてことだろう。あれから十何年もたった。彼は、最初に出会った頃の、幼い彼ではない。もう、良い歳なのに。
過保護なのだ。きっと。

何を祈ったらいいんだろう。
暗い闇のような絶望を旅し、
悪い事をいっぱいしてきた。
人の気持ちを踏みにじった。
人の人生を踏みにじった。
人の命を沢山奪ってきた。
謝罪をするには遅過ぎて、
それでも、自殺するのも止められた。

「許します」

だから、僕は―———


教会の最前列で祈っていた老婆は腰を上げ、帰路につこうと後ろを振り返った。すると、いつの間にか、後方に若い男が身動きもせず座っていた。金色の髪に明かりが当たり、ぼうと光輪が浮かんでいるようだ。
教会は町の喧噪を飲み込み、あまりにも静か過ぎて、浮世離れをしている。
能面の天使はどこか、泣いているように見えた。


2008/09/07

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