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リーベン
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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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「見開かれた緑色の眼が、僕を捕らえる」


見開かれた緑色の眼が、自分を捕らえる。
やっとだ。やっと君は僕を見てくれたね。
待っていたんだ。君に出会ってから。君と別れてから。
永遠に君と僕を隔てからも。ずっと…
僕を見て
僕を見て
僕を見て
すっと頭から血の気が引くのが分かった。寒い。ああ、白い。
どうしよう。目の前が真っ白だ。君が見えない。

だくだくと血を流し、セルブズ・スネイプは冷たい板張りの床の上で、この世を去った。



白い。目の前が真っ白だ。
だが、それが彼岸であるとは考えなかった。人間は、肉体と精神と魂に分けられると中性の錬金術師は言っていたが、スネイプはあの世なんて言うものを信じていない。
死んだ物が全てあの世にいくならば、死後の世界はどれだけの集客数を誇れば良いのだ。
第一、死んだ物の定義が曖昧だ。
犬猫畜生だって生き物だ。感情もその行動に見て取れる。そうして考えるならば、鳥や魚や昆虫や微生物はどうなる?魂が有る無しはどこで線引きをするのか?
とそこまで考えて、そもそもあの世というものが人間の為の信仰でしかない事を虚ろに思い出した。
自分は無信心だ。祈った所で、すがった所で救済される事は無いと幼少の体験が物語っていた。
(………くだらないことを)
そして、つらつらと考えを巡らせていたおかげで、状況を確認するだけの気力が出て来た。
視界が白かったのは何でも無い。カーテンを引きそびれた窓から、東から昇った太陽をまともに浴びて、眼がくらんだだけだ。そして、自分はベットの上に仰向けに横たわっていた。
けして狭くはないのに、本棚やフラスコが入った棚が所狭しと並んでいる為、狭く見える寝室。灰色の壁紙についた、シミなどに目を這わせ、ここがまぎれもなく自分の家だと言う事を確認した。
頭をもたげると、気持ちは酷く重いのに、体は嘘のように軽い。
例のあの人との戦いから幾日立ったんだろうか?
(誰かが、我が輩を家まで運んで面倒を見てくれたのか?)
そのような人脈など、スネイプにはなかったはずだ。スパイとして生きる事を選択した時に、しがらみは全て捨てたはずである。
しかし、致命傷となった筈の蛇にかまれた傷跡もまるでない。それこそ、今までの出来事は、たちの悪い夢だったとでも言うように。

と、いきなり木製のドアが無遠慮に開いた。ぎくりとして身構えると、ぼんやりとした声が聞こえて来た。
「あれ?起こしに来たんだけど、もう起きてたの?ママが下で待ってるよ」
立っていたのは、くせのある黒髪に緑色の眼をした少年だった。
「ポッター!」
スネイプは苦虫をまとめて5、60匹は噛み潰したような顔をした。
やつにこんな気の抜けた姿を見せる事になるとは…。
しかしハリーはそんなスネイプの葛藤にはおかまいなしに、とぼけたように首を傾げた。
スネイプは少しでも侮られないようにとベットを下り、すっと立ち上がった。上からじとりとした眼で、ハリーをねめつける。
「ここは我が輩の家だぞ、ポッター」
「え…うん」
「だったら、出て行ったらどうだ」
有無を言わさぬ態度に気圧されて、ハリーはおろおろとうろたえた。
その時、ようやくスネイプは違和感に気がついた。ポッターは今年17歳の成人になったはずだ。しかし目の前の少年はどう見積もっても12歳の子供にしか見えない。
ハリーは、「ぼく…ポッターなんて名前じゃないよ…。それに、行くたって僕の家もここだし…」と、ぼそぼそ言うと、理不尽に怒られた時の子供のような目をした。
恨みがましい目を向けつつも、その根底に流れる情を感じ取ってスネイプはうろたえた。少なくとも、「冷酷な教師」「裏切り者」「殺人者」として接してきたハリーから投げかけられる筈の無いものだったからだ。
「もういいよパパ。寝ぼけてるんなら、昼まで寝てたら?ママにはそう言っておくから」
まったく、会話が通じない。
以前からポッターと意思疎通が出来ていたとは思わないが、ここまで理解不能な事を言われたのは初めてだ。
罠か?幻覚を見せる呪文かなにかか?
しかし、こんな幻覚を見せて利益を得ようとする人間がいるとは思えない。
その時、開け放した扉の奥から、赤茶色の髪がふわりと踊った。
「もう、ハリーったら。ちゃんとパパを起こしに行ってくれたの?」
柔らかく甘い声。遠くから、いつも見つめていた人。
「りりり…リリー!なんで、こんな所に、それよりも」
生きていたのか!
思わず叫びそうな気持ちを押さえつけた。そんなことはあり得ない。
「パパは寝ぼけてるんだよ」
とハリーは口を尖らせた。
「確かにそうみたいね」
リリーは、年甲斐も無く顔を赤らめたスネイプに呆れた顔を向けた。
まともに目線が遭ってしまい、あわててスネイプは目をそらせる。彼女のまっすぐな緑色の眼が見られない。
「君には…本当にすまないと思っている。あの日から、僕はずっと後悔して来た。…しかし、これは一体どういったことだ?」
リリーは聞こえるほど大きく息を吐いたかと思うと、今度は茶目っ気たっぷりに、
「何を謝ってるんだか知らないけど、自分の子供と妻を忘れたって言うの?筆記試験の成績は良かったのにね」
妻と子供…?
その言葉がスネイプの心臓に染み渡るまで、しばらくの時間が必要だった。
「息子に妻だと?」
とっさに、スネイプはハリーを指差してリリーに言った。
「こいつは、ジェームズの子ではないのか?」
するとリリーは心底嫌な物を見るように目を細めた。
「子供の前で変な事言わないでくれる?それとも私を怒らせたいのかしら」
黒髪、緑目、癖っけ、それは確かにジェームズの…。いや、果たしてそうか?
自分だって黒で癖のある髪をしている。それに繊細で利発そうな顔立ちは、愚かなジェームズのそれとは違う筈だ。
とそこで、額にある筈の稲妻形の傷が無い事に気がついた。
「なんならアルバムでも見せましょうか?」
あなたが朝食をさっさと食べて、食器を全部洗ったらね。
そう言うと、リリーは軽い足音を立てて階段を降りて行った。

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