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リーベン
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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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トライホルン大陸全土を巻き込んだ、まるでお祭りの様な大戦が集結して5年の月日が経った。
東国アカツハラの首都アマハガネは敗戦国といえ、敵国からの大規模な侵攻やテロなどがなかったのが幸いし、奇跡的にほぼ以前の姿を保っている。一国団結と、御所を警備する近衛新兵すら動員し、一時は悪漢がはびこっていたこの街も少しずつ落ち着きを取り戻したようだった。大通りから少し外れた所にある、すすけた木造建築のラスマ練の店は、先代から続く暖簾をのんびりと下げていた。
店には、がたいの良い熊のような主人と、カウンターで注文したきつねラスマ練をおいしそうにすする瞽女がいた。
終戦から5年といえども、まだまだ外食するのは贅沢なことだ。加えて、時刻は昼を中途半端に過ぎた頃。夕刻まで、しばらく客足も遠いだろうと主人も堂々と新聞を開いていた。
「しかしまぁ、なんだってこんな所であっけなく死ぬのかね」
先日から、アカツハラ新聞の一面には御悔やみの記事が掲載し続けていた。瞽女は、それを聞くと箸を止める。と言ってもよくみると、もう食事はし終わっていたのだが。
「将軍の事でしょうか?」
文字など読めなくとも連日連夜、国の話題はあらゆる意味で帝国一の軍人だったヤタ将軍閣下の訃報で持ち切りだった。そして、やはり予想は当たっていたようだ。
「ああ。しかしこれで形骸していた皇帝の威光も、ちっとは取り戻せるかね」
まあ、第二第三のヤタ将軍が産まれないとも限らないが…と、店の親父は呟いた。
「平和な世の中になると良いですね」
「とりあえず、戦争馬鹿が居なくなってくれて万々歳だ」
5年前には決して言えなかったであろう台詞を、主人は憎々しげに放った。しかしなお軍事国家であるこの国で、そのような台詞を語るのは甚だ危険な行為なのだが。旅ガラスの女相手にならば関係ないとでも、思ったのだろうか。主人は饒舌に語りかける。
「追悼式を大々的にやるようだが、果たして誰が献花をするんだか」
「あら…そうでしょうか?わたしはあの戦時中で、ヤタ将軍を慕っている方に会いましたよ」
瞽女の何気ない台詞に、主人は小さな眼をぎょろりと向いた。

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