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リーベン
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リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
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ここは北国ギガンダルにある、打ち捨てられた教会を改造した孤児院だ。
カビ臭く古めかしい、建物は傾いていて、情緒があるとはお世辞にもいえない。
他の部屋より少し広いという程度の院長室には、年老いた院長とそこの職員である若い女性スタッフの影があった。
「行きたいと言っていたな」
おもむろに院長は、黒ずんだ重たい机の上に一冊の情報誌を投げた。不定期刊行雑誌るるぷには、トライホルン周遊ツアーの広告が前面に掲載されている。
「行っていいんですか?」
女性職員は嬉々と、るるぷを手に取った。
敗戦国であり、終戦戦場近くのこの地域に取って、遊興娯楽など夢のまた夢である。
「仕事だ」
やはり、院長は事務的に言い放った。
「貿易船ペル号が主催する遊覧ツアーに関する経済利益が、戦後復興支援に回される事は知っているな?」
「ええ。うちの孤児院は戦後急造した様な超弱小団体ですから、それを当て込んでいるんですよね」
パトロンのいない団体は貧しいものだ。それにも関わらず、身寄りのない子供の数は日ごとに増えて行く。
自給自足を目標に、裏庭に畑を耕しても、育ち盛りの子供全てを補う事は出来ない。
「そこでだ、君に直にツアー主催者に会って接待をして来てもらいたい」
「なんでわざわざ?委員会からの配当を待っていればいいんじゃないんですか?」
「世の中が不平等に出来ているのを、君ならもう知っているんだろう?」
院長は滅多に見せない、いじのわるい顔をしてみせた。
「おおかた配当金の多くは大きな団体に回される。私たちは、なんとかそのおこぼれを拝領するだけだ」
「それは一体…?」
「人数が違う、必要な資金が違う。とまあ言い訳は立つが、実体は既に完成された団体に資金を回す事に寄って、安定した成果が得られるからだよ」
「…………」
「慈善家はそれだけでは活動出来ない。そこには実社会に訴えられるだけの結果がなければならない」
はあ。と女性職員は重たい息をついた。
「めんどうくさいっすねー」
「大人になれば、知りたくない事もいっぱい知らなきゃならんのだよ」
「主催者からのコネだったら、委員会も無視出来ないですものね」
「願わくばな…」
そうそう世の中は甘くはないのか…。と女性職員がるるぷに目を落とす。そこには、ツアーの予定一覧が無邪気に書かれていて…。
ツアー最終日はベイダオの文字を真に理解するまでに、数秒を要する事となった。
「わたし、ベイダオ行くんですか?」
すっかり青ざめた彼女に、院長は簡単な一言で突き放した。
「頑張りたまえ」
いやいや、それは気力の問題ではないと、女性職員はガタガタと震えた。
「アカツハラのベイダオって…うちの軍が一度、城郭攻め落としたんだけど、アカツの援軍で撤退させられて、でも現地復興する前にアカツ軍が進軍した性で、現地人との衝突が起こった上に反政府組織がクー起こして、内乱が起こったあのベイダオですか?」
「…………」
「めちゃくちゃ行きにくいっす!」
敗戦国同士と言えど、敵国に行くだけでも気分が重たい。しかも、そんな事があったのだ。ギガンダル人と分れば、薄暗闇でたこ殴りにされかねない。
「私の方が行きにくいさ!」
「なんでですか!もしかして冥王軍所属だったんですか院長?いくら私お祭り好きですけど嫌っ!怖い!」
必死で首を降り続ける彼女に、
「君なら見た目もあちらさんの機嫌を損ねないだろうから、頑張りたまえ」
見た目の部分を強調して、蛸の頭部を持った院長は乾いた笑いを送った。




END

補足。
この後、先生がアカツハラに出張して、お祭りでミケ船長に会って「お金下さい」って言う予定だったんですが、ピクファンにしては設定がリアル過ぎると思って没にしました。
あと、漫画にするには台詞が多過ぎたので。

作中に出てくる「委員会」というのは、国連とか上層部の経済を管理してる団体のようなニュアンスです。描いていた当時ピクファンにはそういった機関はありませんでした。ので、一応こっちの創作。戦後復興支援団体っていうのが出来たけど、あれは民間企業っぽいしなぁ…

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