| Admin | Write | Comment |
プロフィール
HN:
リーベン
性別:
非公開
自己紹介:
リーベンによる漫画とか映画とか小説の感想や創作。日々のつれづれ。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[12/19 リーベン]
[12/15 yuu]
[08/10 リーベン]
[08/10 秋野]
[08/10 折易]
最新記事
(11/20)
カウンター
ブログ内検索
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「それで、なぜ陛下がこのような所にいらっしゃるのでしょうか?」
「いや、お前は“野放しの大砲(カノン)”だからな」
にたにた笑いを浮かべた皇帝クレオン一世は、黒塗りのどっしりとした仕事机の上で頬杖を付いていた。“野放しの大砲(カノン)”とは、かつてデマーゼルが、危険分子であるという意味でセルダンに対して使った言葉である。なぜか皇帝は、あの時の騒動については記憶力が良い。
「陛下、真夜中になります。ご就寝なさいませ」
「なんだ、もう余は子供ではないぞ」
「…広い皇居で、よく迷わずにこんな所にいらっしゃいましたね」
「普段はそちが赴くからか?それとも余を馬鹿にしようと言うのか?」
そう、基本的に皇帝は、人を呼びつけるものだ。よほどのことがない限り、歩いてどこかに訪ねると言う事はしない。それがわざわざ、デマーゼルのオフィスにいるということは、やはり特別な用事があるのだろう。デマーゼルは聞きたくなかった。

「今回の件では、誠に残念であったな」
と、皇帝は残念でもないように言う。
「お前ももう歳だ。従って、仕事における能力の低下はいたしかたない。あの数学者を余の側近とする決定に変更はないが、お前との付き合いは長い。そちのその後に関して、口を聞いてやっても良いぞ」
「身に余る光栄です、陛下。今まで本当に良くしてくれました。ですが、今後は陛下のお手を煩わせないよう、トランターから離れたどこかの地で隠居生活を送りたいと思います」
「ほう。余の助力なしに、一人でやって行くと?」
慈善家の様に振る舞っていたクレオンの口調が曇る。権力者ゆえの高慢さで、自分の決定に反論されるとは思っても見なかったのだろう。しかし———しかし、本当の所は、これほど長い付き合いで心を許した相手を、簡単に皇帝が手放す事が出来ない。と言うのをデマーゼルは知っていた。だからこその、夜中の謁見なのだ。
「余を置いて行くのか」
いつにない、クレオンの真面目な声。デマーゼルは、全皇帝の時から付けていたその仮面を脱ぎ捨てた。急に疲れきった顔になって。
「置いて行くのはいつだって、あなた方じゃないですか」
と、そう言ってしまった

拍手[0回]

PR
この宰相の態度の変化には、クレオンに少なからず衝撃を与えた。
「デマーゼル。なんの事を言っている?」
それに対し、デマーゼルは答えない。何度も何度でも繰り返す、人間との関わり合い。同じ時を生きられない宿命。寄せては返す波のように、追いかけても届かない。いつか弾けて消えてしまうから。
だから、デマーゼルは人との特別な関係を望まなかった。ロボットの三原則に従う彼は、人間の死を目の当たりにしてしまえば、それこそ機能停止に陥るほどの強烈な影響を受ける。だが、一個人ではなく、全体を見てしまえば、その人の生も死も割り切ってしまえる。
自分だけは変わらず、周りだけが加速的に老いて死んでしまう。そんな割り切れない世界を2万年も生きているのだ。
だがそんなことを知り得ない皇帝は、これを別の解釈で受け止めたようだ。
「それは余もまた、いく年か続いた不幸な皇帝と同じく、すぐに暗殺によって死ぬだろうと言う事か?」
「いえ、違います、陛下。寿命であっても、きっと私ほどには生きてこられないでしょう」
これには皇帝も吹き出さずにはいられなかった。自分よりも歳を取っているはずの人間が、このような戯れ言を言うのだから。しかし、デマーゼルは涼しい青い瞳で、
「私には、やらなければならない事が沢山あるのです、陛下。それこそいくら寿命があっても足りない使命が。もうあなたと遊んでいる時間は無くなりました…」
「はん。よく言うわ。もうよい。好きにしろ。だがな、お前より先に余は死なんぞ」
「いいえ。もう、生きて貴方とお会いする事はありますまい」

拍手[0回]

「それではお元気で」
そう言った時の眼は、愛情なのか、憐憫なのか。
皇帝が、デマーゼルの感情らしい感情を見たのは、それが最初で最後だった。彼は仕事以外に他人との付き合いを持たなかった。彼の事を後から調べてみたが、記録はもちろん、家族構成、出身、人間関係も洗えなかった。
また皇居を出た後、尾行を付けさせもしたが、まかれてしまった。彼の行方はようとして知れない。
結局、自分はあの男の事を、何も知りもしなかったのだな。と、疲れたように皇帝はイスに座り直した。しかしそれでいて、もうあれ以上に心を開ける人間はいないだろう。という事も解っていた。


それから10年ばかり後、ある知らせが銀河帝国中に駆け巡った。この辺境の地、惑星アナクレオンでさえ例外ではない。
時刻は、昼を過ぎたあたり。そこそこに広い食堂だが、重労働者がとっとと昼の仕事に出かけてしまったため、人はまばらだ。そこにプレートをつつきながら、赤い巻き毛の男が「おい、知ってるか、ヒューミン」と、隣にいる男に呼びかけた。
ヒューミンと呼ばれた男は、たいして箸も進んでいなかったが、緩慢にプレートから顔を上げる。そこに、赤毛の男は、まくしたてるように喋る。
「いや、まぁ号外も出てるくらいだから知らないとは思わねえが。皇帝がさ、ほらクレオン一世だよ。亡くなったんだと。どうやら暗殺らしい。んで、宰相も辞任。今トランターはごった返して大変らしいぜー」
ヒューミンの青い瞳が、かすかに揺れる。しかし、男はそれにも気づいた風は無く、「でもまぁ、今までの皇帝と比べると、よく持ったほうじゃないのかねー」
男は、自分なりのトランターでの政治予想を展開させるが、ヒューミンのほうは男の言葉など、もはや耳に入らなかった。
ただ、小さく、震える声でつぶやいた。

「お疲れさまでした。我が主」


2008/06/02

拍手[0回]

昨日やっと買って来て、でもまだ7巻の上しか読んでないんですが、
あれはとんでもない萌えの宝庫やで。

ing43.jpg
ing44.jpg

デマーゼルにキラキラした笑顔を求めるハリさんに爆笑した。
陛下はこの記者会見をビデオ(あるのか?)に永久保存するがいいよ。(笑)

拍手[0回]

砂礫の王を並べ替えしました。
あと、桜の季節を追加。某笑顔動画で、同タイトルの曲を聞いた時に、
書くしか無いと思ってやった。すいません。

以前読んだ方は、(といっても特定の人だけだが)
桜の季節は順番入れ替わってます。3と2が。
時系列順の方が読みやすいかと思って。(読み返したら自分も混乱した)

桜が過去話。砂礫が現在。として読めば、時系列がわかりやすいかな?
たぶんダニールの立ち位置は解りやすいと思う。

あ、桜はちょっとエロいです。あんまりエロいつもりはないけど。
原作でそういうシーンあるんだから仕方ない…。
でもベイ→ダニ前提です。

あの二人は書きにくくてしょうがないね!

拍手[0回]

≪ Back   Next ≫

[133] [134] [135] [136] [137] [138] [139] [140] [141] [142]
忍者ブログ [PR]